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相続登記

財産分離/遺留分減殺請求

(9)財産分離

相続財産と相続人の財産が混同しないように分離,管理,清算する手続きのことをいいます。財産分離には相続債権者または受遺者の請求による第一種財産分離と相続人の債権者の請求による第二種財産分離があります。実際この制度が利用されることはほとんどありません。

(10)遺留分減殺請求

遺留分とは,被相続人の兄弟姉妹以外の相続人に対して留保された相続財産の割合をいう。被相続人の兄弟姉妹以外の相続人には相続開始とともに相続財産の一定割合を取得しうるという遺留分という権利が認められる。代襲相続人にも遺留分権は認められている。

ア 総説
(1) 遺留分制度の趣旨

民法の相続規定は原則として遺言によって排除しうる任意規定であり,相続財産は被相続人が生前処分や死因処分によって自由に処分することができ,推定相続人の相続への期待は権利として保障されないのが原則である。しかし,相続人が被相続人と共に生活している場合等被相続人の財産がなければ生活保障されない場合をかんがみ配偶者・子供・直系尊属に遺留分を認めている。兄弟姉妹は,別に生活本拠を構え被相続人とは別の家計で生活していることが大半なので兄弟姉妹が相続人であっても遺留分は認めていません。その他,被相続人名義の財産には相続人の潜在的持分が含まれていることが多くあり,これを顕在化させる必要がある点などにかんがみ,相続財産の一定割合については,強行規定として,遺留分という相続財産に対する権利が認められる。

(2) 強行法規性

遺留分は,被相続人によって奪うことができません。しかし,被相続人に対し著しい虐待・侮辱などがあれば家庭裁判所にその相続人の廃除の申請をすることができる。

イ 遺留分の帰属と割合
(1) 遺留分の帰属

遺留分は被相続人の兄弟姉妹以外の相続人に認められ,被相続人の兄弟姉妹が相続人であっても遺留分はない。なお,代襲相続の場合の代襲相続人にも遺留分は認められる。

(2) 遺留分の割合

遺留分の割合は相続人の構成により次のように異なります。

(1)直系尊属のみが相続人の場合は被相続人の財産の3分の1
(2) それ以外の場合は全体で被相続人の財産の2分の1

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ウ 遺留分の放棄

遺留分を放棄した者には遺留分は帰属しないことになります。相続の開始前における遺留分の放棄には家庭裁判所の許可が必要になります。これは被相続人や推定相続人らが強制する可能性もあり家庭裁判所に監督させるという意味があるのです。共同相続の内一部の相続人が遺留分の放棄をしても,他の各共同相続人の遺留分に影響はありません。

エ 遺留分の算定

遺留分は被相続人の財産を基礎として算定されるため,まず,算定の基礎となる被相続人の財産の範囲を確定することが必要となります。算定の基礎となる財産は被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除して算定する。

(1) 被相続人が相続開始の時において有した財産の価額

条件付権利または存続期間の不確定な権利については,家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従って,その価格を定めます。

(2) 算入すべき贈与

原則として相続開始前の1年間のものに限り,その価額を算入します。しかし,当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは,1年前の日より前にした贈与についてもその価額を算入します。

贈与した財産の価額は,相続開始時の貨幣価値に換算して評価します(最判昭和51年3月18日民集30巻2号111頁)。民法1044条の準用規定によって,民法903条1項に定める相続人に対する贈与は,民法1030条の要件を満たさないものであっても,特段の事情のない限り遺留分減殺の対象となります(最判平成10年3月24日民集52巻2号433頁)。具体的な遺留分の額については,遺留分算定の基礎となる財産額に民法1028条で定められた遺留分の割合を乗じ,遺留分権利者が複数であるときは遺留分権利者それぞれの法定相続分の割合を乗じ,さらに,遺留分権利者が特別受益財産を得ているときにはその価額を控除して算定します(最判平成8年11月26日民集50巻10号2747頁)。

オ 遺留分減殺請求権
(1) 意義

遺留分権利者及びその承継人は,遺留分を保全するのに必要な限度で,遺贈及び 民法1030条に規定する贈与の減殺を請求することができます。

(2) 減殺の順序
(1) 遺贈,贈与の順に減殺する
(2)遺贈はその目的の価額の割合に応じて減殺する 
*ただし,遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときはその意思に従う
(3)贈与の減殺は後の贈与から順次前の贈与に対してする

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(3) 減殺請求権の行使・効果

遺留分減殺請求権の行使は受贈者または受遺者に対する意思表示でなす形成権です(最判昭41年7月14日民集20巻6号1183頁)。遺留分減殺請求権の行使は物権的効力が生じるとするのが判例の立場です。したがって,遺留分減殺請求権の行使により,贈与や遺贈は遺留分を侵害する限度で失効し,受贈者や受遺者が取得した権利はその限度で当然に遺留分減殺請求をした遺留分権利者に帰属することになります(最判昭和51年8月30日民集30巻7号768頁,最判平成11年6月24日民集53巻5号918頁)。

(4) 減殺に関する諸規定
受贈者の無資力による損失の負担 減殺を受ける受贈者が無資力である場合に生じる損失は遺留分権利者の負担に帰することになる。
遺留分権利者に対する価額による弁償 減殺請求の相手方である受贈者や受遺者は,減殺を受けるべき限度で,贈与や遺贈の目的物の価額を遺留分権利者に弁償することにより返還義務を免れることができる。価額算定の基準時は現実に弁償がなされる時であり,遺留分権利者が受贈者や受遺者に対して価額弁償を請求する訴訟の場合にはこれに最も接着した事実審口頭弁論終結時が基準とされる(最判昭和51年8月30日民集30巻7号768頁)。
(5) 減殺請求権の時効消滅・除斥期間

遺留分減殺請求権は,遺留分権利者が,相続の開始及び減殺すべき贈与または遺贈があったことを知った時から,1年間行使しないときは,時効によって消滅します。相続開始の時より10年を経過したときも同様です。民法1042条前段の「減殺すべき贈与があったことを知った時」とは,贈与・遺贈があったことを知り,かつ,それが遺留分を侵害して減殺できるものであることを知った時とするのが判例です(大判明治38年4月26日民録11輯611頁)。なお,民法1042条は遺留分減殺請求権そのものを対象とする規定であり,遺留分減殺請求権が行使された結果として生じた目的物返還請求権は民法1042条の消滅時効にはかかりません(最判昭和57年3月4日民集36巻3号241頁)。

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