トップ > 相続登記 > 遺贈

相続登記

遺贈

(11)遺贈

遺贈とは,遺言により人(法人も含む)に遺言者の財産を無償で譲ることをいいます。本来の相続人に対する遺贈も法律的には可能だが,この場合は相続とすることもでき(不動産登記を参照),相続税などの計算の際は相続より遺贈の方が不利となる。また,遺贈は単独行為である点で,契約である死因贈与と異なる。

ア 受遺者になれる人

胎児は,遺贈については既に生まれたものとみなされるので受遺能力があります。 

また,受遺者には相続の場合と同様に欠格事由がないことも必要です。受遺者は,遺言者の死亡後,いつでも,遺贈の放棄をすることができます。受遺者が遺贈の放棄または承認をせずに死亡したときは,その相続人は自己の相続権の範囲内で遺贈の承認または放棄をすることができます。

イ 遺贈義務を負う人

遺贈を履行する義務は,原則として相続人が負います。包括受遺者は遺贈者の権利義務を包括的に承継することになるので遺贈を履行する義務を負います。相続人が不明である場合は相続財産の管理人が,遺言執行者がいるときはその執行者が遺贈を履行する義務を負います。

ウ 遺贈義務者の責任

不特定物を遺贈の目的とした場合,受遺者が第三者から追奪を受けたときは,遺贈義務者は売主と同じ担保責任を負います。また,目的物に瑕疵があったときは,瑕疵のない物と代えなければなりません。

エ 遺贈の種類
(1) 包括遺贈

遺産の全部,または一部を割合をもって示し対象とする場合である。包括受遺者は相続人と同一の権利義務を持つので,包括遺贈の放棄は自己のために遺贈のあったことを知った日から3か月以内にしなければなりません。

(2) 特定遺贈

具体的な特定財産を対象とする場合の遺贈をいいます。特定遺贈の放棄は,包括遺贈と違って遺贈者の死後いつでもできます。特定遺贈の目的物は,遺言者の死亡と同時に直接受遺者に移転することになります(大判大正5年11月8日民録22輯2078頁)。相続人に相続された後に遺贈されるわけではありません。

(3) 負担付遺贈

遺贈者が受遺者に対して,「妻の面倒をみてくれ」など義務を負担するよう求める場合である。負担付きの受遺者は遺贈の目的の価値を超えない限度においてのみ,負担した義務を履行しなければなりません。負担付きの受遺者が遺贈を放棄すれば,負担の利益を受けるべき者は自ら受遺者になれますが,遺言者が遺言で別段の意思表示をしたときはそれに従わなければならない。負担付遺贈を受けた者が義務を履行しないときは,相続人または遺言執行者は相当の期間を定めて履行を催告でき,なお履行がないときは遺言の取消しを家庭裁判所に請求できます。

ページの先頭へ

オ 遺贈の不成立・失効

遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは,遺贈は効力を生じません。停止条件付き遺贈の場合,受遺者が条件成就前に死亡したとき遺贈は効力を生じないのですが,遺言者が遺言で別段の意思表示をしたときはそれに従うことになります。遺贈が効力を生じなかったり放棄により効力を失ったときは,受遺者が受けるべきであったものは相続人に帰属します。しかし,遺言者が遺言で別段の意思表示をしたときはそれに従うことになります。

カ 登記に関する判例

遺贈により所有権が移転した場合,登記をしないと第三者に対抗できません(最判1964年(昭和39年)3月6日)。一方,相続人の一部に対して特定の遺産を「相続させる」旨の遺言によって不動産を取得した者は,その権利を登記なくして第三者に対抗できます(最判2002年(平成14年)6月10日判時1791号59頁)。これは遺贈と相続の性質の違いと遺贈は他人から見えにくく登記しないと知り得ないので取引の安全を考慮し遺贈の場合は登記を第三者の対抗要件としたのではないかと思われます。

キ 遺言書の記載と登記原因

原則として遺言書の文言に従い,登記原因を決定することになります。

遺言の文言 登記原因
相続人全員に対して「相続させる」
(1972年(昭和47年)8月21日民甲3565号回答)
相 続
相続人全員に対して「特定遺贈する」
(昭和58年10月17日民三5987号回答)
遺 贈
相続人の一部に対して「相続させる」 相 続
相続人の一部に対して「遺贈する」
(昭和48年12月11日民三8859号回答
遺 贈
相続人以外の者に対して「遺贈する」 遺 贈
相続人全員に対して「包括遺贈する」
(昭和38年11月20日民甲3119号電報回答)
相 続
相続人以外の者に対して「相続させる」
(登記研究480-131頁)
遺 贈
ク 遺贈の不動産登記
登記原因 登記原因は包括遺贈・特定遺贈のいずれであっても「遺贈」
原因日付 原則として遺言者の死亡の日です。しかし,停止条件を付した遺贈において,条件成就が遺言者の死亡後であるときは,条件が成就した日です。
登記原因及びその日付の記載方法 原因 平成何年何月何日遺贈
申請構造 遺贈義務者を登記義務者とし,受遺者を登記権利者とする共同申請です。包括遺贈の場合,民法上は受遺者は相続人と同一の権利義務を有するものの,登記手続上は登記権利者として相続人または遺言執行者との共同申請で行います(昭和33年4月28日民甲779号通達)。受遺者が遺言執行者として指定された場合は,登記権利者かつ登記義務者として事実上の単独申請で行います(大正9年5月4日民事1307号回答)
添付情報 登記原因証明情報,登記義務者の登記識別情報又は登記済証,書面申請の場合には登記義務者(相続人又は遺言執行者)の印鑑証明書,登記権利者の住所証明情報を添付します。法人が申請人となる場合は更に代表者資格証明情報も原則として添付します。なお,農地を特定遺贈した場合,農地法3条の許可書を添付します昭和43年3月2日民三170号回答)。一方,包括遺贈の場合は添付する必要しません。遺言執行者がいる場合には,その資格を証する情報を添付します。具体的には,遺言により遺言執行者が指定された場合は遺言書及び遺言者の死亡により遺贈の効力が発生したことを示す戸籍謄本・除籍謄本です(昭和59年1月10日民三150号回答)。家庭裁判所で遺言執行者を選任した場合は選任の審判書及び原則として遺言書(家庭裁判所の選任審判書だけでは遺言執行者が当該申請に係る不動産につき遺言を執行する権限があるかないかわからないから)です(昭和44年10月16日民甲2204号回答,登記研究265-60頁)。死亡の事実は家庭裁判所で判断するので戸籍謄本等は不要である(登記研究447-84頁)。遺言執行者がいない場合には,申請する人物が遺言者の相続人であることを証する情報を添付します。遺言書(登記研究733-157頁)及び遺言者の死亡を証する戸籍謄本・除籍謄本及び相続人の戸籍謄本・抄本です。
登録免許税  受遺者が相続人でない場合は不動産の価額の1,000分の20となります(登録免許税法別表第1-1(2)ハ)。受遺者が相続人である場合は相続による所有権移転登記の場合(登録免許税法別表第1-1(2)イ)と同様に不動産の価額の1,000分の4となります。この税率の適用を受けるには申請書に受遺者が相続人であることを証する書面(戸籍謄本等)の添付が必要です(平成15年4月1日民二1032号通達第1-2)。
ページの先頭へ